シリコンウェーハの基礎と周辺業界について
シリコンウェーハとは、コンピュータ、スマートフォン、自動車など、私達の暮らしを支える多くの機器に入っている半導体素子を作るための基礎となる材料です。
したがって、今後も無くならず、また、多くの業界を繋ぐアイテムであると言えます。
この記事では、そんなシリコンウェーハについて簡単にまとめていきたいと思います。
シリコンウェーハの概要
シリコンウェーハとは、高純度のシリコン(ケイ素)を薄い円盤状に加工したもので、集積回路を形成するための基盤となります。
その純度は99.999999999%と言われており、”9”が11個並んでいることから、この驚くべき純度を”イレブンナイン”と呼ぶことがあります。
つまり、シリコンウェーハは不純物がほとんど存在しないケイ素の結晶なのです。
ケイ素は半導体物質の一つであり、信号増幅や電気のスイッチング機能を果たすトランジスタを形成するために重要です。
トランジスタはコンピュータのCPUなどに組み込まれている集積回路に多数使われており、シリコンウェーハの重要性が分かると思います。
シリコンウェーハは、あくまで集積回路を形成するための基盤であり、それ自体に機能はありません。
半導体のトランジスタとしての機能は、このウェーハに微量な不純物を添加したときに発現します。
もちろん、不純物は何でも良いわけではなく、ホウ素(B)原子、窒素(N)原子など、限られた種類の原子であり、添加した原子により性質が変わります。
シリコンウェーハにこうした不純物を注入することで、半導体素子メーカーはウェーハ上にトランジスタを形成して所望の集積回路を作り上げます。
そうして作られたIC(集積回路)がCPUなどに組み込まれ、私達のもとに届きます。
シリコンウェーハが出来るまで
ケイ素の原料である珪石は、日本を含めどこでも採れるありふれた鉱物です。
そんな珪石から、シリコンウェーハが出来るまでの工程を、簡単に説明します。
珪石はケイ素の酸化物(主成分:二酸化ケイ素)なので、高純度シリコンを作るためには、まず還元してケイ素を取り出す必要があります。
工程1. 二酸化ケイ素を還元して、単体のケイ素を取り出す
この工程は、カーボン電極を使用したアーク炉を用います。
大量の電力を消費するため、 電力が安い国から輸入することが一般的です。
工程2. 単体ケイ素を塩素と反応させて発生させた四塩化ケイ素ガスを蒸留して、高純度多結晶シリコンを取り出す
この工程は、日本企業ではトクヤマ(4043)が世界大手です。
工程3. FZ法やCz法などを用いて、高純度多結晶シリコンを単結晶シリコンインゴットとして取り出す
工程4. 単結晶シリコンインゴットを薄くスライスして、超平坦・超清浄なシリコンウェーハを仕上げる
上の二つの工程は、信越化学工業(4063)やSUMCO(3436)が独自の結晶成長技術を用いて行っており、この二社だけで世界の半分以上のシェアがあります。
また、この二社ほどではありませんが、フェローテックHD(6890)も国内のシリコンウェーハメーカーの一つであり、同工程を一貫して行っています。
こうしたメーカーが、半導体素子メーカーにシリコンウェーハを販売しています。
今回の記事では、日常に溢れている機器に使われている半導体技術の基礎となる、シリコンウェーハについて紹介しました。
しかし、半導体を取り巻く企業はこれだけではなく、半導体素子メーカーはもちろん、半導体製造装置メーカーなど、多くの企業があります。
後々の記事で、それらの基礎についても紹介していきたいと思います。